FC2ブログ

東京の女はムスクをまといがち~

24歳にもなると、初めて見る風景も初めて口にする味も命中率は落ちていく。
匂いも一緒で、どんな匂いを嗅いだって何かしら心当たりがある。

朝の電車、大人の女性のうっすら香るフレグランスに包まれて、
夜の電車、赤ら顔の中年男性から漏れ出る酒の臭気を感じとり、
たどり着いた玄関で、まだ新しい革の匂いが残るストラップ・シューズに手をかける。

そのたび何かを思う。
言葉にするほどでもないような ぼんやりした、
懐かしいだけでは済まされなくなった、
忘れそうな思い出を
今の風景で更新していく

言ってはいけない言葉のひとつ
「それは君の黒歴史だね」
そんなつまらん評価をせんでくれ!
そのうちなじんでいくものなんだぞ!
今は嗅ぐだけで眉をひそめてしまう、あんな匂いやあんな匂いも、別になんでもないって思う日は来るし
ピーピーピー! ドッキンコドッキンコ!
スポンサーサイト



痛々しい日々


18歳の春、たくさん一目惚れをした。
大学生になりたての、浮わついた糞ガキだった。痛々しいぜ!

18歳の春に憧れた先輩は、うすいブルーのシャツやベージュのチノパンを好んで着るひとで、もの静かだけどつまんなくない、春が似合うひとだった。
(まあ 秋もよく似合ったんだけどね。)

わたしのことを「浮わついた子だなあ」って顔で見てたけど、わたしはその先輩の前ではずっと浮わついた子だったから、ずっと「浮わついた子だ」と思われてたと思う。

何の時だったか忘れたけど、その先輩が石鹸をくれた。真っ白い台形の石鹸で、真ん中に大きなさくらんぼの形が埋め込まれてるの。赤・白・緑
嬉しかったなあ。
石鹸くれるなんて素敵! って思ったっけなあ。
なんでくれたんだったかな、突然だったような、うーん、思い出せないや。

5年近く、ずっと使えずに箱の中にしまってあったその石鹸を、この春からの新生活に合わせて えいっと開けて、使い始めた。
まだ ちゃんとさくらんぼ風のいい香りがして、使う度に手がピンク色に染まる。

こんな風に思い出されてるなんて、先輩は思いもしないだろう。
思い出される方はいつもそんな感じだろう。
その石鹸を使う、わたしの生活は楽しくなる。その石鹸が減っていく、わたしの気持ちは少し複雑。
忘れちゃいたい過去・誰かの存在を思い出すきっかけが消えちゃうのは悲しいこと。
使っていった暮らしの実績・なくなってしまえばそれで終わり。

感傷的になりすぎるのは、また痛々しいぞ、と思ってごしごし使う。
いつかどこかでばったり遭遇しても気まずい感じにならないように

いつか今日のことを思い出すときも
痛々しい! と思わないですむように
わたしは思い出を使い切る

思い描いた画にならないこと

オハピー! 最近の口癖は「こんなに頻繁に揺れるなんて、人間の住むべきところじゃない」です!

今日は白シャツ着込んだ朝7:30、よーし、白シャツには ひっつめポニーテールだぜッと思って洗面台へ。
髪を結ぶ黒い輪っかゴムを口にくわえながら、白いブラシで全体の髪を一ヶ所に集める。後頭部に腕を回して一気に、丁寧に。
集める位置はとても大事。
高過ぎず低過ぎず、若過ぎず地味過ぎず。

う~ん、オフィス・レディの朝って感じ。うふふ。

と思いながら、鏡を見遣ると、
黒いゴムが
ちょうど口の回りを囲むように垂れ下がっており、
さながらドリフのコントに出てくる泥棒みたいで
間抜け間抜け間抜け!
そしてそれが似合う自分に驚き、
二度見


ということで ポニーテールはうまくいかず、今日は髪を下ろしての出社です!
明日こそ!

母親と涙の親和性高過ぎ

いやー、くつずれはもうこりごりですわ!
ベルト穴も かかと部分の皮も、はやくわたしになじめ!
そしてわたしもはやくいろんなもんになじめ!

22歳で上京していた友人は、23歳をまる一年暮らし終えた感想として「東京に来て、心がすさむっていうの、わかるよな」って言っていたよ。
なんとなくわかるような、街のせいじゃないやろなような、歳のせいちゃうかなような、どうでもいいようなことに聞こえたよ。
順繰りにやってくるゴミ出しの日と、いつも混んでるATM、どんどん財布を膨らませていくポイントカード、頼んでもないのに渡される領収書。
そしてやってくる月曜日。すかさず顔をのぞかせる火曜日、待ち構える水曜日。洗濯かごに溜まっていくタオルと下着。
わたしたちを支配するものはわたしたちをうんざりさせる。
わたしたちは支配されるのがきらいだもんね。

そのうち暮らしのリズムを自分でコントロールできるようになって、ふるさとではない街の流れに乗れば、それはそれで乗れてしまった自分に少し嫌気が差すかもしれんよなあ。


遠くで暮らす母親からの電話に出ると、気が楽になって安心して、不安を隠して意地をはって、わたしはとても惨めな気分になった。

はやく くつずれ治るといいな

いちについて、よーい、磨け!


Jokyoしたジェイ! フッフー

今日は、わたしにとって東京で初めて靴を買った記念日。
売れ残ったセール品の、 ダーク・ベージュ・ハイヒール・ストラップ・シューズの空洞に、わたしの左足はぴったりすっぽり収まった。
ミス・マーチンが、わたしの足元にしゃがみこみ、ストラップの長さを調節してくれる。新しい皮にベルト穴はなかなか開かない。彼女は手こずり、それでも焦らずやりとげようとしてくれる。
わたしは すました顔をつくって それを見届けていた。
「この靴、試し履きなさるお客さん多いんですけど、皆さんサイズが小さくて諦めてしまうんですよ。
お客さん、ぴったりですね、シンデレラ・シューズですよ」
ふいに言われて、わたしはちょっとびっくりした。
(こんなフトモモの太いシンデレラなんていないよ!)
でも、ワンテンポ遅れて嬉しさがキラキラやってきて、わたしはそのまま東京の街に酔いそうになった。


人ごみに酔うのと 乗り物に酔うのと お酒に酔うのと 雰囲気に酔うのと、いろいろなものにわたしは酔う。
そのたび全身うっとりしたりぐったりしたり。
そういう魔法に掛かったときは、自分のいたわりかたを知っているもの勝ちなんじゃないのって思ってる。
そのうち、きっと、上手な魔法の掛かり方ってのを身につける日が来るんじゃないかな、わかんないけど。


明日は多分、わたしにとって くつずれ記念日になるだろう。
だからって何のことはない。オロナインだってあるし くつずれ専用ばんそうこうだって持っている。出掛ける前にタイツの下に貼っておくのだ。
それでも多少のストレスは掛かるだろうな、それぐらいは必要だよね、きっと愛着に換算されるし。
わたしのくつずれ記念日を苦い思い出には させんのだ!

 | HOME | 

26歳・女です。

twitter@koyama1987やってます。メールはこちら

Categories

Recent Entries

Archives